白黒写真とカラー写真を合成?
http://www.treeman9621.com/CPP_BRANCH/cpp207/buggy.htmlより
「この写真の背景は白黒画像だ。カラーの月面車の写真を合成したのだ」と、黒月氏は言う。本当なら、確かに怪しげな話だ。
リンク先から写真を拾ってきた。氏が解析に使っているのは、この(個人的には“悪名高き”w)Wikipediaに掲載されている写真である。確かに、背景が完全な白黒に見える。
http://en.wikipedia.org/wiki/File:NASA_Apollo_17_Lunar_Roving_Vehicle.jpgより
同ページには転載元のソースとして、NASA公式サイトのアドレスが書かれている。そこから拾ってきた写真がこれ↓。
上の、Wikiに載っている写真と見比べてみて欲しい。こちらはやや赤系の色が入っているのがお分かり頂けるだろうか。
http://grin.hq.nasa.gov/ABSTRACTS/GPN-2000-001139.htmlより
NASAの写真を、フォトショップの〈彩度を上げる〉コマンドで最大にしてみた。
パッと見、白黒っぽいが、微妙に色が付いていることが分かる。完全な白黒画像の場合、いくら彩度を上げても白黒のままだからだ。
次はWikiに載っている写真の方を、彩度を100パーセントに上げてみる。
何と、Wikiの方は背景が完全な白黒であった。NASAと同じ写真のはずなのに。なぜこんなことになっているのだろうか。
これは間違いなく、NASAの写真をWikiに転載する際、何者かが加工を施したものだ。カラー写真の背景だけを選択して、白黒にするなど簡単にできる。
当該ページに写真をアップしたユーザーは、Duffman~commonswikiとなっている。恐らくこの人物が“犯人”であろう。目的はサッパリ不明だが。
ちなみに、この写真にはバリエーションがある。他サイトの写真では、背景に様々な色が入っているのだ。
http://www.apolloarchive.com/apollo_gallery.htmlより Apollo Image Atlasより
筆者はもちろん月面に降り立ったことなどないので、どの写真の色合いが「本物」なのかは分からない。
分からないが、少なくとも「どやァ!」とばかりに正体を暴いている黒月氏自身が、Wikipediaの「作られた白黒背景」写真に騙されているのは確かだ。
そもそも、もしNASAの誰かが合成写真を作ろうとしたとしても、「白黒の上にカラーを乗せる」などとバカなことを考えつくだろうか。誰が見ても不自然ではないか。
●黒月氏の認識不足
トム・ハンクス主演の1995年の映画『アポロ13』をご覧になった方は、こんなシーンがあったのを覚えているだろうか。
アポロ13号が飛行中に事故を起こし、クルーの生命が危うくなったとのことで、急遽マスコミがクルーの自宅に殺到する。そのとき船長の夫人が、
「ウチの主人が月へ行くことになっても誰も取材に来なかったのに、事故が起きたとたんに取材に来た訳ね」
と、ゲンキンなマスコミに皮肉を言うシーンだ。
ユニバーサル映画『アポロ13』より
ここに描かれている通り、ぶっちゃけ11号の月面着陸の熱狂が納まった後は、アメリカ国民のアポロ計画への関心は潮が引くように冷めていったのだ。
宿敵ソ連との競争に勝って、スッキリ溜飲を下げたからもう十分、また月へ行きたきゃ勝手に行けば、だったのである。
黒月氏は一連のアポロ写真を、偽物だ、合成写真だと決め付けるが、12号以降の写真に関して言えば、時代背景的に考えられない。
当時はデジタル画像合成の技術など存在しない。だのに、この方はこんなスゴイことを書いている。
>これらの偽物画像を調べてゆくと、現在制作しているゴブリントランスファーの技術を上回るテクニックで、巧みに合成されたと考えるべき画像が見つかってきた。デジタル画像による合成のテクニックは、アポロ11号のころ、すでに存在していたのだ。
http://www.treeman9621.com/KAI_HP_Guide/RandomNote2009/RaN13_ColorfulMoonSky.htmlより
工エエェェ(´д `;)ェェエエ工、ホントだったらそりゃスゴイ。コンピュータの歴史すらも塗り替えるお説ですねw
11号の1969年当時は、現在のハードディスクの代わりに、まだ鑽孔(さんこう)テープやパンチカードを使っていた時代である。
http://co-smart.net/?p=5625より
1972年に発売されたIBMのSystem/370。その最大メモリは240キロバイト。CPUは4ビットや8ビットだ。
しかもディスプレイもグラフィックソフトも無い頃に、どうやってデジタル画像同士を合成したというのか、お教え頂けないだろうか。ようやくビットマップ画像を扱えるワークステーションが開発されたのは、70年代中盤、とっくにアポロ計画は終わった後だ。
当時の写真合成は、切り貼りして複写するか(画像の鮮明さがなくなる欠点がある)、絵の具やエアブラシで加工する、職人の手作業の世界である。一万枚以上もそんなものを作ったと?
ましてや、11号から3年も経った17号の頃は、国民のほとんどがアポロ計画など忘れ去っていた。そんな、自分に関係ないことより、ウォーターゲート事件やベトナム戦争の趨勢の方がホットな関心事だった。そんな頃に、わざわざセットを作って撮影したり、捏造写真をチマチマ作ってまで嘘をつく必要などどこにもなかったのだ。
アポロ捏造論者に共通する、無知と認識不足である。
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