■犯行声明の謎


A犯行声明から宮崎勤本人の指紋などが見つかったという話もない。
http://kagiwo.blog18.fc2.com/blog-entry-152.html

B今田勇子の正体が宮崎勤であるという明確な証拠はない。
http://www.asyura2.com/0505/bd41/msg/730.html

宮崎は絵梨香ちゃん宅に〈絵梨香―かぜ―せき―のど―楽―死〉のハガキを送った際「このハガキを作るとき、指紋が付かないように軍手をはめた」と供述している。

また、犯行声明、告白文、その他ハガキは全て違う町から投函されていた。手紙からアシがつかないよう、細心の注意をはらっていたことが分かる。

今田勇子の手紙については、本人につながる証拠の隠滅がほぼ完璧だったということだろう。



●簡単な冤罪作成法

確かに捜査報告書295号、306号、377号では、どの手紙、ハガキからも指紋は検出されなかったという。だが筆者は逆にこの結果に、捜査における信用性は高いものと感じる。

なぜなら、指紋など捏造しようと思えば簡単だからだ。身柄は押さえているのである。

宮崎に「これをよく見てごらん」とか言って、犯行声明の実物を素手で触らせるだけでOKなのだ。後はニヒドリン溶液に浸し、アミノ酸が指紋の形に浮き上がるのを待てばよい。

冤罪派は証拠の遺体ビデオなどを捏造と決めつけるが、逆に、本当に冤罪をでっちあげる気になれば、そんな手の込んだ物を作るより、はるかに簡単確実な方法がいくらでもある。

もしも筆者が、人を冤罪で陥れても平気な悪徳警官?だったら、迷わずそちらの方法を取るだろう。


仮にこの事件が冤罪ならば、指紋やノコギリといった、簡単に捏造できる証拠が出てこないことの方がむしろ不思議な話だ。





●書き損じ


Bしかも筆跡を操作しながら書き損じがない。宮崎にそれができたとは思えないという声は今も根強くあるし(略)
http://www.asyura2.com/0505/bd41/msg/730.html

>書き損じがない

「警警」「送った姿第です」「故か(“何故か”の脱字か?)」等々、犯行声明だけでも、明らかな書き損じが十数ヶ所もあるのだが。「書き損じを消した跡がない」が正確だ。

現物は、大学ノートにシャープペンシルで書いてからコピーした物が送られていた。消しゴムや修正液で書き損じは直せるし、コピーすれば痕跡は消える。

曲がりなりにもマスコミに送りつける“挑戦状”である。誤字を塗りつぶすようなみっともないことは宮崎とて避けたはずだ。十数ヶ所は、本人が誤字に気づかなかったか、修正をし忘れただけであろう。


(犯行声明)

>宮崎にそれができたとは思えないという声は今も根強くある

他にそんなことが書かれた資料は何一つ見当たらないので、恐らく下の文章からの引き写しであろう。つまり“今も根強くある”のは、この小笠原氏の本の中だけでのことである。


小笠原和彦著「宮崎勤事件夢の中―彼はどこへいくのか」(1997/現代人文社)55ページより


実物の犯行声明は書き損じだらけなのに、こんなことを書いているとは、お二方ともろくに調べていない証拠だ。

(全文は資料集「犯行声明」を参照)




●切手


B切手に唾液がついていたかどうかという情報も出てきていない。鑑定した結果はおろか、鑑定したかどうかという情報も公表されていない。
http://www.asyura2.com/0505/bd41/msg/730.html

>鑑定したかどうかという情報も公表されていない

一応情報は公表されていたことをお伝えしておく。鑑定結果は確かに不明だが、報道されてない以上特定できなかったのだろう。そもそも切手は水で軽く濡らせば貼れるものだ。

ちなみに、日本人の約16%という「非分泌型」の場合、唾液中にABO型抗原が分泌されないので、唾液から血液型は特定できない。宮崎が非分泌型だったかどうかは、資料がなく不明だが。


(朝日新聞89年2月12日)



●筆跡

「今田勇子の字は宮崎の字とまるで違う。宮崎は今田勇子ではない」と、冤罪説ではいつも言われるが、犯人が直筆手紙などを書く場合、筆跡がバレないよう意図的に字を変えることくらい、今どき小学生でも知っていることである。

仮に読者のあなたがヤバい犯罪者だとして、ワープロや
PCが使えず、犯行声明を直筆で書く必要に迫られたとしよう。自分の筆跡を誤魔化すためにあなたならどうするか?

一昔前のドラマで有名な〈文字の切り貼り〉や〈左手で書く〉等の方法はある。だがそれで長文を書くのは大変シンドイ作業だ。

最もてっとり早いのが〈直線的な、角ばった字で書く〉であろう。平仮名の曲線などは自分のクセを隠すのが困難だからだ。神戸のサカキバラ事件の挑戦状など、いい例である。今田勇子の手紙もしかりだ。
犯行声明の平仮名部分は、カクカクとした作字を最後まで根気よく続けている。だがそれをやっていると、逆に漢字を書くときに気が緩んでしまうのだ。

本職の筆跡鑑定士は、漢字を構成する「へん」や「つくり」のバランス、大小、全体の形などを比較してチェックする。意図的に字を変えようとしても、それらは無意識に自分の“地”が出てしまう。

右は全て犯行声明から。左は全て上申書から。今田勇子と宮崎が別人だとしたら、ここまで字が似るというのも奇妙な話である。



また、宮崎は「入る」という字を書くとき、右の“はらい”が通常とは逆のカーブになるクセがあるようだ。


宮崎は、とりたてて自分の筆跡を隠すつもりはなかったように思える。仮に筆跡を残したところで、自分と誘拐した幼女らをつなぐ線は何もなく、疑われることはないとふんでいたのではないか。



●〈点と線〉

今田勇子=宮崎勤については、客観的な、動かしがたい証拠に乏しいのは確かだ。だが“今田勇子”は所詮、この一連の事件の中ではごく一部の要素に過ぎない。

幼女誘拐殺害犯としての宮崎を裏付ける数々の証拠は、各項に紹介した通りである。
では、宮崎と今田勇子をつなぐ〈点と線〉を以下に書き出しておこう。




●コピー機のトナーが一致

科警研の鑑定により、遺骨入り段ボールの中に入れられていた紙片〈真理―遺骨―焼―証明―鑑定〉に使われていたコピー用のトナーと、犯行声明、告白文に使われたトナーの成分が、同一のキャノン社製コピー機
NP3000系のものと判明。

警察は埼玉西部、都内1016台分のコピー機販売台帳を洗っていたが、そのリストの中に宮崎宅の印刷工場も含まれていた。宮崎宅で使用されていたコピー機はキャノン社製
NP3225であった。

アサヒグラフ89年8月25日号より



●段ボール箱

段ボール箱は精密機械用の特種なもので、流通経路をさかのぼった末、川越市内のとある元光学機器メーカーの製品と判明した。そこの家の兄弟がビデオサークルの会員で、自社の段ボール箱にテープを入れて宮崎に送っていた。宮崎はその箱を使ったのである。

その兄弟への聞き込みと捜査は進展するも、二人が宮崎の住所のメモを紛失してしまい、今一歩のところで途切れてしまう。※注1


(朝日新聞89年8月12日)



公開された段ボール箱(共同通信より)




●同一のテープ

遺骨入り段ボール箱の底に貼られていた粘着テープは
T社静岡工場で生産された「オリーブテープNO・142」で、同一のテープがラングレーのトランクから発見された。

(読売新聞89年8月14日)



●段ボールに“ペス”の毛

段ボール箱の土砂の中には、茶色い犬の毛が混入していた。それは宮崎宅で飼っている柴犬“ペス”の毛と同一と鑑定された。

(日本経済新聞89年8月18日)



●封筒を発見


宮崎の机の引き出しから、告白文を送るのに使った封筒と同じものが見つかっている。この二種の封筒セットは88年度お年玉年賀ハガキの景品で、年賀ハガキ500枚に1セットしか当たらないもの。

宮崎宅の工場では年賀状も印刷しており、工場長のM氏によると、大量の年賀ハガキの中から当選番号のハガキを見つけて景品と交換するのを、宮崎は〈役得〉にしていたという。

告白文送付後、警察は88年度の景品引き換え書約1900人分を捜査。その中に宮崎の名前もあったが、まだその時点では犯人とは突きとめられなかった。

                        (AERA89年2月21日号)      (毎日新聞89年8月18日)

左が犯行声明に使われた封筒。あて名部分がケイ線で囲まれている独特な物。




●真理ちゃんの顔写真

そしてどの冤罪説でもキレイに無視される、今田勇子と宮崎をつなぐ、最も重要な物証が真理ちゃんの顔写真である。


真理ちゃんの歯の謎」と重複するが、2通の犯行声明に貼られていた真理ちゃんの顔写真と、遺骨入り段ボールに入れられていた半ズボン、サンダル写真の3枚は、「富士フォトラマ・FI-10」というインスタントフィルムで撮られていた。両方とも遺族が真理ちゃん本人、本人の衣類と確認している。


下は5月5日の記事だが、すでにこの時点で使用されたカメラが突きとめられている。

画面サイズ〈6×7版〉の中型カメラで、そのうちFI-10専用ホルダーを装着できるのは「マミヤRB67」一機種しかないことが分かったのである。このカメラと専用ホルダーは一般販売店ではほとんど扱っておらず、専門店か取り寄せ注文でしか入手できない。

記事下のイラストは犯人が告白文に描いた真理ちゃん写真の図解(拡大画像は「告白文」に掲載)。


(朝日新聞89年5月5日)

下は7月22日(宮崎が強制わいせつで逮捕される前日)の記事。

FI-10フィルムの裏上部には固有の乳剤番号(製造番号)が印字されており、段ボールに入れられていた衣類写真の番号は〈17411〉であった。犯人のうっかりミスだった。

フィルムの件が報道され、手がかりになるのを恐れたのか、真理ちゃんの顔写真は周囲がハサミで切り取られていた。しかし、真理ちゃん写真の乳剤成分を分析した結果、衣類写真と同じフィルムと判明している。

(朝日新聞89年7月22日)

下は宮崎逮捕後の記事。三枚の写真に使われた乳剤番号〈17411〉と同じ番号のフィルム空き箱が、宮崎の部屋から発見、押収された。

(読売新聞89年8月15日)


その後の調べで宮崎が「写真は知人から借りたカメラで撮った」と供述。その知人は報道の直後、マミヤ
RB67を任意提出した。※注2

下の記事で知人の氏名は公表されてないが、恐らく、時々テニス場でのパンチラ撮影に付き合い、カメラを貸していたという短大時代の友人
Y氏と思われる。
真理ちゃん写真の一枚だけに、左端に黒い5ミリ程の謎の線があった。当初、フィルム装着ミスによる未感光部分と思われたが、宮崎の供述から、単に遺体ビデオから複写したときにテレビの外枠が写り込んだものと判明した。
                   (朝日新聞89年8月18日)     (朝日新聞89年8月17日夕刊)

こんな事をいくらあげても冤罪派にはどこ吹く風、馬の耳に何とやらだろう。

証拠がなければ「冤罪!」、証拠があればあったで「捏造!」なのだから始末におえない。そこまで言うのなら、ぜひとも〈捏造されたという根拠〉を示して頂きたいものだ。

彼らにとって事実などどうでもよく、事件を〈謀略〉の妄想に彩ってネットにバラまき、知らない人をたぶらかせばそれで満足なのだろう。

                   



●今田勇子は警察関係者?

今田勇子に関連して、これも奇妙に根強く語られ続けているのが、今田勇子=警察関係者説である。その根拠は?と読んでみると、どうやらどの説も拠り所はこの一点らしい。

B今田勇子の犯行声明は、警察の内情を知っている人間が書いたようなニュアンスを漂わせている。

「署長は、捜査員には、絶対に写真を見せず、言葉でしか、その写真を説明していない筈なのです」
「警察も、そこまでやるようになったのだなあと思いました」
「これは、警察官が、いつも心えていることでもあります」などの箇所である。
http://www.asyura2.com/0505/bd41/msg/730.html


アホらしくてお話にならない。警察官同士でしか意味の通じない、特殊な専門用語でも使われてるならともかく、こんな事は誰にでも書けることである。
どうやらこの方は、推理小説の殺人シーンを読めば「この作者は実際に人を殺してるのではないか?」と思ってしまう人のようだ。

因みに、犯行声明の該当部分の前にはこんな一文がある。


「また、署長は、上総部には写真を見せてはいても、下の者には、決してその写真を見せていない筈です」

「上層部」を「上総部」と書き間違うとは、ずいぶんお粗末な警察関係者だ。警察官は採用時に漢字試験を受けるというのに。


(犯行声明)

また、告白文の該当部分は本当はこうなっている。


「”考える”ということは、”自分で思ったことをひらめきにしてしまう”ということとは全く違うことです。これは、警察官が、いつも心えていることでもあります」

警察官はこんな訳の分からないことをいつも心得ているのだろうか(笑)。

※注1 
この件については多くの報道で「メモを紛失した」と書かれているが、実際は紛失しておらず、事件に関わるのを恐れて犯人逮捕まで秘匿していた、という当時の捜査関係者の発言もある。

※注2
宮崎の犯行では、なぜか全て借り物のカメラが使用されている。パンチラ写真は興味津々だが、自分のカメラを所有することには全く興味がなかったようだ。

宮崎宅からは10台以上のカメラが押収されている。ローカル紙とはいえ新聞社だったので不思議ではないが、父親がカメラマニアで、新品をすぐ購入していたという。これらのカメラを好き勝手に使えたので、自分のを持つ必要がなかったのだろう。

初めて自分のカメラとして購入したのがキャノンEOSと思われる。その試し撮りに出かけた日に、強制わいせつで逮捕されたのだった。

余談だが、父親も、レアなニュース映像のビデオを大量に収集し、周囲から感心されていたという。この幼女連続殺害事件も(息子の犯行だと知る前から)丹念に記事や録画を集めて保存していたという。モノマニア的な性向は親ゆずりのようだ。

宮崎は逮捕後、留置場から父親に「こういう事件を起こすことになったのはお前のせいだ」と、罵倒する手紙を何通も送っていた。父親は父親で「勤があんな事件を起こしたのは妻の教育のせいだ」と、責任転嫁していた。どこまでも似たもの同士である。



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