■腐敗臭と凶器の特定


@この事件、ちゃんと調べてみると、どこからどこまで、たしかにおかしいのである。

疑問点は様々あるのだが、一番おかしいのは、物的証拠が無いことだ。

被害者を殺害し、運んで処理したとされる、宮崎被告の車や自宅から、まるっきり被害者の髪の毛も指紋も体液も血液も、何の反応も無かったのである。
http://ccplus.exblog.jp/8146130

この方はいったい何を「ちゃんと調べて」こういう記述をされたのか、お尋ねしたいものだ。

本当に事件から時が経ち、風化したことを思い知らされる。事件をよく御存じない方は、こんなウソ八百を読めば「そうだったのか」と信じ込んでしまうのだろう。

(毎日新聞8月19日夕刊)                   (朝日新聞8月12日夕刊)


(毎日新聞8月19日夕刊)

「物的証拠が無い」というセリフは、これらが全てデタラメであるということを、きちんと客観的に証明した後で言って頂きたい。




●自室から血痕


B宮崎は綾子ちゃんを殺してから遺体を自室に隠していた。ビデオ撮影をして弄んでいたが、2日後に腐敗臭が強くなったのでノコギリで解体したという。

だが宮崎の部屋は他の部屋とカ―テンやベニヤ板で簡単に仕切られているだけである。にもかかわらず家族は誰も宮崎の行為に気付いていない。隣の部屋にいた妹は腐敗臭などしなかったと言っている。
http://www.asyura2.com/0505/bd41/msg/730.html


つまりはそんな事実はなかった、と言いたいのだろうか。

小笠原和彦著「夢の中〜」では、「部屋からO型の人血が確認された、との報告もあるが(中略)血液反応があったのは、わずか6ヵ所にすぎない」とある。

「たった6ヵ所じゃん。証拠にならないよ」と言いたいようだ。だがそもそも、自室から他人の血痕が出ること自体、普通なら考えられないシチュエーションではないか。綾子ちゃんの血液型は
O型で、宮崎はB型である。

宮崎とてバカではない。自室の花ゴザの上に直接遺体を置いて切断した訳ではない。シートや毛布の上にさらに黒ビニール袋を敷いたりと、ちゃんとそれなりのことはしていた。

また、遺体の心臓は止まっており、動脈から血が吹き出ることもない。血管内に残っている血液が流れ出るだけだ。それでも数ヶ所の血痕の付着は防げなかったということだ。それを裏付けるのが以下の記事である。


(毎日新聞8月25日)



切断の音は?


B宮崎の部屋は他の部屋とカ―テンやベニヤ板で簡単に仕切られているだけである。
http://www.asyura2.com/0505/bd41/msg/730.html

このように書かれると、まるでカ―テンやベニヤ板一枚へだてただけの部屋で、宮崎と妹たちが暮らしていたかのような印象をうける。実際は、宮崎の部屋と妹たちの部屋の間には、5畳ほどの空き部屋をはさんでいたのだ。

(週刊新潮06年1月26日号より)

一審の最終弁論より。弁護人の証言。

佐木隆三著「宮崎勤裁判 」より

小笠原著「夢の中〜」では、この空き部屋の存在はカンペキに無視されている。もちろん「妹の部屋とベニヤで仕切られただけの部屋で、遺体の切断などできる訳がない。だから宮崎は冤罪だ」としたい彼らには、邪魔なモノだからだ。
他にも、トランクの血痕の件を全く無視してたり、小笠原氏ら「M君裁判を考える会」の主張は、自分らに都合のいい箇所を拾い集めて繋ぎ合わせているに過ぎない。

そして小池壮彦氏は、ご自分で検証もせず、彼らの文章を丸写しして雑誌に発表している訳である。


(文芸春秋89年10月号より)


切断の音はいつも問題にされるが、どこかのホラー映画みたいにチェーンソーでブッタ切った訳ではない。

手引きのノコギリでゆっくり引いたなら、少なくとも家族が飛び起きるような音などたてないはずである。何なら鳥や牛の骨付き肉でも買ってきて、実験されてみてはいかがだろうか。

幼児の骨は成人より細く、しかもノコギリの音は周りの肉で消音される。「切断の音に家族が気付かないはずがない」の方こそ、リアリティーが欠如した物言いだ。
マンションやアパートにお住まいの方なら、隣に空き部屋があるだけで、どれだけ騒音が緩和されるかはよくご存知であろう。
ここでは宮崎の供述の「妹たちの寝静まるのを待って、テレビの音を大きくし(中略)切断した」という弁を引いておこう。※注


Bもちろん遺体などは見ていない。
http://www.asyura2.com/0505/bd41/msg/730.html

宮崎は以前から、妹が勝手に部屋に入るなどすると、殴る蹴るの暴力を振るっていた。この頃すでに、妹らにとって宮崎は「嫌な同居人」に過ぎず、その行動には無関心であったのだ。


※注 ただし「いつ切断したか」については、検察側論告と精神鑑定で食い違いがある。検察側は「8日の夜に切断」で、精神鑑定では「7日の昼」となっている。

検察側の論告は、逮捕後の供述調書から作成されたものであり、精神鑑定は、逮捕から1年6ヶ月後に宮崎が語ったことだ。1年半も経てば、記憶が都合よく変容した可能性が有り得る。従って当サイトでは、基本的に検察側の論告を信用する。





腐敗臭は?


B隣の部屋にいた妹は腐敗臭などしなかったと言っている。
http://www.asyura2.com/0505/bd41/msg/730.html

綾子ちゃんの遺体は、(空き部屋を越えて)隣の部屋にまで達するほどの腐敗臭を発していたのだろうか?

気象庁のホームページで、過去数十年分の気象データが閲覧できる。http://www.jma.go.jp/jma/index.html
綾子ちゃんが殺害され、遺体が遺棄された、1989年6月6日夕刻〜9日深夜までの気温は何度だったのだろうか。宮崎宅のあった五日市町の観測データはないので、隣町の八王子市のデータを参照する。


http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.phpより


死亡後数時間で、体内の腐敗菌が繁殖を始める(腐敗は内臓から進行する)。通常、体外に腐敗臭が出始めるのは約48時間後だ。綾子ちゃんの死亡は6日夕刻だが、宮崎は「8日になって遺体が臭いだした」と供述しているので、その頃には臭気を放ちだしたようだ。


だが6日以降の三日間、平均気温は低下していっている。

7日の最高気温は28度で、初夏の陽気だが、最低気温は一気に10度近くも下がっている。9日などは12度前後だ。これは4月初旬並の気温で、いわゆる梅雨冷えとなったのだ。

30度を超える真夏日が続いたならともかく、この7、8、9日の三日間の気温で、遺体が部屋から漏れ出すほどの腐敗臭を放ったとは考えられない。妹は事実を語っているだけだ。

そもそも、そんな強烈な臭気が部屋にたちこめたなら、とっくに宮崎自身が耐えられないはずである。




霊園の遺体の臭いは?

11日午前中に遺体が発見された、埼玉県、宮沢湖霊園の管理人(F氏)の証言。


小笠原和彦著「宮崎勤事件夢の中―」(1997/現代人文社)64ページより

遺体は臭いがしなかったと言う。小笠原氏は、これが「宮崎の無実を明らかにする貴重な話」だというのだ。

飯能市の隣町、所沢市の、9日から11日にかけての気象データ。

http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.phpより

宮崎が遺体を遺棄〜発見までの約一日半、最低気温は11度と、冬に逆戻りしたかのような低温だ。しかも連日雨が降っている。

遺体の表面は僅かに、パラフィンの膜を張ったような〈死蝋化〉現象を起こしていたという。雨で遺体の表面が冷やされた証拠である。外部の腐敗の進行は止まり、臭気はほとんど発散しなかったと見ていいだろう。

「おなかがプックリふくれて」とあるが、腹腔に腐敗ガスが溜まっていたせいと思われる。

「臭いがなかった」話に「M君〜会」のお三方は興奮しておられるが、発見場所は臭いがこもる密室ではなく、風通しの良い屋外だったことはお忘れのようだ。しかも臭いがなかったからといって、それがなぜ宮崎の無実につながるのかは、何の説明もされていない。





ノコギリの捜索

B部屋から押収されたノコギリからは血液反応が出なかった。宮崎は遺体の解体に使ったノコギリを河川敷に捨てたと供述したが、どこを探しても見つからない。ついに凶器は特定されなかったのである。
http://www.asyura2.com/0505/bd41/msg/730.html


凶器は特定されなかった。じゃあそんな事実はなかったんだ、と、こんな一文で思わず感じさせられてしまう。この誘導の巧みさは筆者も見習いたいものだ(笑)。

部屋にあったノコギリは犯行に使用されてなかったのだから、血液反応が出ないのは当たり前である。

秋川は川幅4〜50メートルの大きな川で、7月中旬の大雨で濁流になっている。筆者は台風直後の増水した秋川を見たことがあるが、人間でもうかつに入れば流されそうな濁流であった。

ノコギリ投棄から捜索までは約2ヶ月。「捨てたらヒラヒラと落ちた」という数百グラムの薄い鉄板である。流されて発見できなかったとして、何の不思議があろうか。
なお、7月23日に市民による河川敷のゴミ拾いが行われ、会社員がノコギリを拾って廃棄していた。警察はこれらを追跡、発見したが形状が異なっていた。


(朝日新聞89年8月16日夕刊)

凶器の発見は重要なので、ノコギリは8月15日と早い時点で、ゴミ集積所まで捜索されたが、その後も発見には至らなかった。

8月中に、公判維持に十分な他の有力物証が多数見つかったので、ノコギリの捜索は打ち切られたようだ。
ノコギリの報道は発見できぬままフェードアウトしたが、逆に冤罪を仕立て上げたいのなら、こんなに簡単に捏造できる物もない。そこら辺のノコギリにO型の血液を付着させればOKである。その程度のことが思いつかなかったはずはあるまい。


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