■宮崎勤の自作パズル
(ホットドッグプレス1983年1月10日号より)
宮崎が短大生時代に雑誌「ホットドッグプレス」に投稿した自作パズル。決まった正解はなく、一定のルールに沿って任意のデジタル数字を円陣に書き込み、その総得点が最大になった人が優勝らしい。
「ホットドッグプレス」とは“カッコ良くキメて女の子にモテよう!”な記事に満ちた、当時のいわゆるナンパ系情報誌である。その中にあって、このパズルコーナーだけが異色というか、妙にマニアックなページだ。創作パズルの趣味も、理数系が得意だったという宮崎らしいと言えばらしい。こうした趣味などから浮かび上がったのが、犯行メモのアナグラム説や、以下の“IQ137”のデマである。
●“IQ137”のデマ
(夕刊フジ89年9月19日号より)
夕刊フジは9月19日号に“宮崎のIQは137”と書いた。IQの上限はほぼ160で、一般人の平均は100前後、東大生の平均は120らしい。そうすると137という数字はかなりの秀才ということになる。確かに、見出しだけを見るとちょっと驚いてしまう。だが記事をよく読むと、実は単なるウワサなのだ(笑)。
(同記事より)
一面トップにデカデカと載せておいて、本文で「実はウワサ」とは‥‥スポーツ新聞ならではという感じだ。そもそも簡易鑑定で知能テストは行なわない。
宮崎は高校時代に成績が600人中450位に落ち、明治大学への推薦入学をあきらめている。本当にIQ137だったらそんなことはなかったはずなのだが。下は1990年12月に行なわれた、精神鑑定での知能テストの結果。「100から90」は全く普通レベルだ。
(佐木隆三著「宮崎勤裁判」(1991/朝日新聞社)より)
なぜ夕刊フジがこんなデマ記事を書いたのか不明だが、20年以上経った今でも広く伝播しているようだ。「宮崎勤 IQ」で検索をかければ、おおむね似たような数字が出てくるだろう。
まァ恐らく“高いIQの異常殺人犯”という、ギャップをはらんだイメージが受けて、一人歩きしたのではないか。ちなみに、知能指数の高さと対人コミュニケーション能力は何も関係ない。
見出しに「ナポレオン並みの知能指数」とあるが、これも100年近く語り継がれた都市伝説のようなものだ。そもそもナポレオンは知能テストなど受けていない。
“ナポレオンのIQ135”は1920年代に、コックスという少々トンデモ入った学者が、伝記などから「だいたいこの位じゃね?」と勝手に推定しただけのものだ。知能指数の研究は、当時の差別的な〈優生学〉と無縁ではない。コックスがIQを推定した“偉人”達はみな西欧圏の白人であり、彼らの人種的な優越性のプロパガンダだったに過ぎない。
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