不思議な牛乳ビン

石川氏の冤罪云々とは直接関係ないと思われるが、個人的にあまりにも不思議なので、備忘録として書いておきたい。

埋められていた善枝さんのカバンが発見された際(このカバンの発見経緯も実に怪しげなのだが)、さらにその下から、半分飲みかけの牛乳ビン等が見つかったという。


http://wwwd.pikara.ne.jp/masah/symjk37.htmより転載

中の牛乳は腐敗し、ヨーグルト状に固化していた。写真では白い斜めの塊に見える。

もし自供通り、石川氏が買ったものだとしたら、善枝さんの誘拐・殺害・強姦・芋穴への死体逆さ吊りをする間、ずっとこの飲みかけの牛乳ビンを持っていたことになる。あまりにもバカげた話だ。

●善枝さんが買ったもの?

後日、目にした資料によると、当時善枝さんはこの『ジェルシー牛乳』を、クラスの十数人と共に購入していたという。

「何だ、善枝さんの持ち物だったのか。それならカバンがあったところから見つかってもおかしくないな」と思い、疑問は氷解したかのように思えた。

だがこの写真をよく見ると、何だかオカシイことに気づく。

●ガラス製牛乳ビンについて

このタイプのガラス牛乳ビンは、最近は殆ど姿を消しており、現在20代以下の世代には、現物を見たことがない方も多いだろう。筆者の世代は学校給食で毎日のように出されたので、大変馴染み深い。よく牛乳を飲むときに笑かし合いをして遊んだものだ。

飲み口に厚紙でフタがされ、その上から薄紫色のビニールカバーが軽く糊付けされている。


http://tamabisentou.blog64.fc2.com/blog-entry-9.htmlより転載


現在のペットボトルのキャップと違い、厚紙のフタは一度開けたら元通りに塞ぐことはできない。店頭でお店の人にこのような↓器具で開けてもらい、その場で飲み干すのが、当時の普通のスタイルだった。

http://mheart556.blog96.fc2.com/blog-entry-1259.htmlより転載

なぜこんなことをクドクド解説してるかというと、カバンの下から発見されたなる牛乳ビンに、ビニールカバーが被さっているのが、大変奇異に感じてならないからだ。

写真からでは、紙フタがされているかどうか分からない。だが裁判資料には〈牛乳キャップの文字・日付関係 右写真撮影〉等とあるので、紙フタはされていたと思われる(そもそもビニールカバーだけを被せても、何の意味もない)。

やったことがある方はお分かりと思うが、紙フタを元通りに塞ぐのは、大変困難なのだ。うっかり力を入れれば、ズボッと押し込んでしまう。そんな面倒なことをするより、飲み干してしまえば済むことだ。

●なぜ“お持ち帰り”?

この『ジェルシー牛乳』は容量が180CC。普通の缶コーヒーがおおむね250CCなので、その約4分の3と、少々小ぶりなサイズだ。

フタやカバーがされたのは、当日善枝さんが牛乳を飲みきれなかったので、自宅に持ち帰るためだったのだろうか。その行動自体は有り得るかもしれぬが、善枝さんはカバンを自転車にくくりつけて通学していた訳である。

もしフタが緩かった場合、カバンの中で中身がこぼれ出て、ヒサンなことになってしまう。では縦置きに入れたのか?中の牛乳ビンが倒れないよう、気をつけながらカバンを荷台にくくりつける…ちょっと理解に苦しむ行為だ。

このように、善枝さんが買ったものだとしても〈元通りにフタがされた飲みかけの牛乳ビン〉は、奇妙に感じられてならない。
ましてや石川氏が死体やカバン類を必死に隠匿するかたわら、そんな面倒で無意味なことをしたとは、とうてい考えられない。

しかも犯人の指紋はおろか、善枝さんの指紋までが出ていないのは、どういう訳なのか。

うっかり素手で触ってしまった犯人が指紋を消したのか。そう考えるのが妥当とは思うが、限られた資料のみからでは、どうにも判断がつかない。

もっとも、以上の話も、その牛乳ビンの上にあったなるカバンが真実、善枝さんの物だったという前提での話に過ぎない。カバンの発見経緯の疑わしさや、実物であったのかなどは、これも長くなってしまうので、詳細は他サイトの検証を参照されたい。
http://wwwd.pikara.ne.jp/masah/symjk13.htm


2015・6月23日追記

●ビン牛乳腐敗実験

先日、狭山事件にお詳しい方と雑談した際、上記の疑問をお尋ねしてみた。

「あれは新品の牛乳が腐ったんじゃないの?」

とのご意見であった。なるほど、それならフタやビニールカバーが付いたままでもおかしくない。しかし未開封の状態のものを埋めたとして。腐敗したからといって、半分近くも体積が目減りするものなのだろうか?水分が蒸発しようが無いのに?

こればかりは実験してみるしか無さそうだ。


とは言え、まずガラスビン入り牛乳の入手に難儀した。何しろ現在ではそんじょそこらに売っていない。探したあげく、大手百貨店のデパ地下食品売り場でゲットできた。



「ウチに何か恨みでもあるのか!」とクレームがついてもアレなので、商品名は写らないよう配慮(^_^;)。

牛乳は未開封のものと、半分飲んで紙フタをしたものの2本を用意し、近所の公園の一角を(こっそり)お借りして埋設。

これを5月1日(犯行当日)から、(カバンの下から発見されたとされる)6月21日までの約2ヶ月間、地中に埋めておき、結果を見てみようという訳である。



ちなみにスコップは筆者の自前。養豚場から盗んできたんじゃないよ(笑)。

●実験結果

埋設から約2ヶ月後。6月21日に牛乳ビンを掘り出してみた。結果は少々意外なものであった。


半分残した方(左)は、約1センチ程度しか目減りしていないのに、未開封の方(右)はかなりの量が目減りしていた。

紙フタを中途半端に塞いだ方が、より水分が蒸発しそうな気がしたのだが、逆の結果となった。

(ちなみに今回はヨーグルト状に固形化せず、水分と脂肪分が分離し、振ればチャプチャプとなる状態であった。これは当時の牛乳との、成分の違いと考えるより無さそうだ。)

未開封の牛乳が腐敗して、半分近くに目減りする現象は事実と判明した。先の方のご意見が裏付けられたことになる。

今回の結論として。
善枝さん殺害当日に埋められた牛乳ビンは、新品状態だったという方にどうやら軍配が上がりそうだ。

筆者がクダクダと書いた「飲みかけにカバーを被せた」なるバカなことは、善枝さんも犯人も誰もやらなかった、と考える方が妥当のようである。

もっとも「牛乳は善枝さんが持っていた」のか、(検察側の想定したストーリーのように)「犯人が持ち歩いていた」のかという、肝心な点は何一つ分明しない、あまり意味の無い実験ではあったが。

このページの冒頭に書いた疑問はとどのつまり、写真の見た目や、事件資料の「半分飲みかけの牛乳が見つかった」等の一文に、余計な疑問を抱いた筆者が勝手に振り回されただけ、というオチのようだ。

やはり実証が大事なことを痛感させられた、少々お恥ずかしい実験結果である。




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