23・「推理マニアのお遊び」




「狭山事件 一問一答 冤罪論の疑わしさをめぐって」より



>その問題を検討するには、最低限、彼らの血液型と筆跡とアリバイは基本情報として抑えておかなければなりません。

ずいぶんと高みから仰っているが、ではWolfgang自身は、それらの情報を押さえた上で石川犯人説を唱えているのか?
少なくともこの中の何名かの情報は、一般には公表されていないのだが?



>捜査当局は彼らの血液型も筆跡もアリバイも抑えた上で容疑者から外したわけです。

では本当に石川氏は、血液型も筆跡もアリバイも押さえた上で容疑者とされたというのか?改めて一つ一つ見ていきたい。

●筆跡

筆跡の件は本項1〜12で、Wolfgangにお付き合いしてイヤと言うほど書いたので、正直もう書き飽きたのだが。

有罪論者や裁判所が、筆跡についてどれだけ苦し紛れなこじつけを行なってるかは、少しでも資料に目を通せば誰にでも分かることだ。
警察三鑑定を出した一人、高村巖などは(逮捕後、脅迫状を大量に書き写させた後の)一ヵ月後・6ヵ月後の手紙を対照して「同一筆跡」などとしている。ハッキリ言ってズルである。

5年前に書いたとされる一文字や、さんざん“練習”させた後の文字をつかまえて「ほら見ろ、脅迫状とそっくりだ!」とやるのは、恥ずかしくて見ていられない愚行と言うべきだ。それをWolfgangは執拗に繰り返して得意になっているだけである。

それはともかく、科警研と鑑識の技官が、上申書・脅迫状等の筆跡資料を受け取ったのは5月22日。逮捕状は何と、その日のうちに請求されている。

それぞれの鑑定書が出来上がったのは6月1日と10日。つまり「鑑定の結果、石川はクロ」だったのではなく、鑑定などろくにしてもいないうちから見込み逮捕されたのは、時系列上明白だ。

二審第39回公判での、石田弁護人と中勲本部長とのやり取り。


弁: 「筆跡の入手と言われましたが、石川一雄君の筆跡を入手したのは、上申書という題名の書類ですね」
「」
中: はい」
「」
弁: 「記録によると5月21日のようですね」
「」
中: 「ですから、22日にそれに対する中間結果がそれぞれ出てるはずです」
「」
弁: 「そんな書類はさっぱりないんですがね、何か書類上あるんですか」
「」
中: 「なきゃならんと思います。22日に関根技官の、同一筆跡と認められるという報告と、鑑定の中間報告が電話で、やはり同一筆跡と認められるというような、表現が少し違うかもしれませんが、いずれにしてもそういう回答があったように記憶してます」

「なきゃならんと思います」とは、言いも言ったりだが。

要するに、文書ではなく電話で「同一なんじゃないの」と聞いた、という話に過ぎない。そんなものが“中間報告”なのだそうだ。

さらに、例の寺尾裁判長は、判決文の中でこんなウソ八百を書いているのだ。

(逮捕状請求の)疎明資料として、(中略)被疑者自筆の上申書とその筆跡鑑定書並びに被疑者の行動状況報告書であって、これらを資料として審査した結果、請求通りの被疑事実によって逮捕状が発せられ、これにより5月23日午前4時45分被告人が逮捕されたことが認められる。

(控訴審判決)

逮捕状請求時には、筆跡鑑定書なる文書は影も形も無かったというのに。

●アリバイ

石川氏は犯行当日の時間帯、家族と一緒にいたという。家族もそのように証言しているが、親族のアリバイ証言に証拠価値は認められないので、石川氏が犯人ということにされている。しかし当日の5月1日の夕刻、そんな人は他にゴマンといたはずなのだが…

石川氏が「家族と一緒にいた」ことの客観的証明はもはや不可能だが、逆に石川氏が「現場にいた」ことを証明する証拠も何一つない。


●血液型

血液型についても、なかなか胡散臭い。以下は二審第12回公判調書より、中田弁護人の質問と将田政二警視の証言。


弁: 「証人はさきほど石田豚屋関係で捜査の対象にあがった27、8名中筆跡が一致していたのは石川一雄一人であった、血液型がB型であったのも石川一雄一人であったと証言されたがそのとおりか」
「」
将: そうです」
「」
弁: 「そのすべては石川一雄について逮捕状を請求する以前に分かっていたのか」
「」
将: 「血液型の関係は全部についてわかっていなかったと記憶してます。したがって血液型については、その後も行なったと記憶しています」
「」
弁: 「すると膣内から採取された精液の血液型と同じであるということが完全にわからないあいだに、すでに捜査当局は石川一雄の逮捕状をきめたわけか」
「」
将: 「はい、恐喝未遂の関係で逮捕状を請求したのです」

将田氏はしれっと「はい」などと答えているが、その意味に気づいているのだろうか。警察は石川氏の血液型を「逮捕するまで分からなかった」と言っているのだ。

寺尾判決では

被告人について5月22日に行った煙草吸殻による検査では、B型かAB型か判断困難でB型の可能性が大きいということであり、翌23日に行った唾液による検査ではB型であったこと―

(控訴審判決)

逮捕前の21日、刑事らは石川氏に上申書を書かせた際、タバコの吸殻も持ち帰った。その検査結果は「B型かAB型か判断困難」「B型の可能性が大きい」。

「可能性が大きい」とはまた、ずいぶん大雑把な話だ。



一、石川を有力容疑者とみる根拠は次のような点だ。(中略)C血液型が犯人のものと同じB型の公算が大きい。

(朝日新聞 1963年5月23日夕刊)


逮捕当日の夕刊記事、中勲警視正の発表。「公算が大きい」って…。

石川氏の唾液そのものを鑑定に回したのは逮捕当日の5月23日。その鑑定書が出来たのが6月14日(まるで再逮捕のタイミングに合わせたかのような日付だ)。

証拠上はっきりB型と断定されたのは、逮捕から23日も経った後である。最初の別件逮捕は、血液型もあやふやな状態でなされたとしか言い様がない。

これのどこがWolfgangの言う「血液型も〜押さえた上で」なのだろうか。


●「不合理で支離滅裂」


>亀井トムも殿岡駿星も甲斐仁志も伊吹隼人も

Wolfgangが彼らの著作や論考を「推理マニアのお遊び」と決め付けるなら、筆者はこのWolfgangのページを「差別オタクのお遊び」と決めて差し上げよう。「お遊び」の上に「タチの悪い」もオマケにつけよう。



>市井の推理マニアの主張がどれもこれも確定判決に輪をかけて不合理で支離滅裂で荒唐無稽なのは、無理からぬこと

確かに彼らの主張の中には、いささか飛躍し過ぎとしか思えない推測も含まれてはいる。

だが少なくとも筆者は狭山事件に関して、このWolfgangが書いた文章ほど「不合理で支離滅裂で荒唐無稽」で、品性下劣で醜く、タチが悪いモノにお目にかかったのは初めてである。




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