■「アイドルスターCM集602」序文 


週刊文春89年8月31日号より


はじめに
 皆さんも御存じのように、現在は、〈懐古(レトロ)〉ブームが花咲り。と同時に必然して、〈特集〉ブームでもあるわけです。
 TV・雑誌・レコード等が、現在盛んに世に出しては、私達の胸を打ち、心をなごませてくれています。いいことですね。
 そこで     (空白部分)     ょう。確かに、現在の〈懐古〉〈特集〉ブームになる前から存在している不変的な催しですが、やはりこれも立派な特集ものでしょう。色々なサークルが、色々な個人が「自分の好きなものだけ」の特集をしてるんですね。〈懐古〉ブームに目を付け、金儲けを目的として、ひとの好ききらいを問わず、問うひまなく出版物や
VTRを出す企業とは違い、悪魔で、自分達の好きなものを自分達の好きなように創り出すところに、やはり同人誌の魅力があるのでしょう。
 この同人誌も、数えきれない程ある
CMの中で、昔からこつこつと集めていたアイドルだけのCMを特集することに決まり、様々な人からを持ち寄って創った、同人誌の中では、多少異質ではありますが、画期的な特集誌として完成されております。
アイドルが好きなだけで、アイドルの
CMにちょっと関心の無かった人も、CMの内容だけ追っていて、出演アイドルのことまではちょっとねェという人も、アイドルにもCMにも無関心の人も、この誌を見たら、うーむ、これはなかなかだ思われることでしょう。今回特集したCM一つ一つに、出演者のアイドル名と、出演時の顔・髪・しぐさ、企業名及びキャッチフレーズを極力あますことのないように記してあります。ま、一種のアルバムが手に入ったぞぐらいの気持ちで、パラパラとめくったが最後、一度読み始めたら止まらなくなることでしょう。一つ一つ、字数も少なく、唄もくちずさめるようになっておりますので、充分楽しめることうけあいます。尚、P3から数ページにわたって字が薄かったり、絵柄が濃かったり致しますが、制作上、印刷上の都合ですので、御了承下さい。

※誤字、脱字は原文ママ。

宮崎が88年8月(?)の同人誌即売会、コミックマーケットに出品した同人誌の序文。〈発行 夢・特集プロ〉〈代表・宮崎勤(ビデオ収集)〉。一冊500円で1万円程の売り上げがあったというから、20册前後は売れたようだ。

冒頭の「必然して」という、普通、使わない言い回しは〈告白文〉にも登場する。また「飽くまで」に引っかけた「悪魔で」には、パズルやアナグラム好きだった宮崎らしさが伺える。

原文では「達」の字が“しんにょう”に「幸」と書かれている。犯行声明でも同じ誤記をしている。こうしたささいな漢字の誤りは他人からの指摘などをされない限り、えてして間違ったまま使い続けてしまうものである。


(602序文)


(犯行声明)

今野真理ちゃんが失踪して一連の事件が始まるのが、このコミケ参加から10日後。宮崎の26歳の誕生日翌日からであった。



CM雑誌への投稿


「CM・NOW 88年サマー号」より




■コミックマーケット35・サークルカット




AERA 1989年8月29日号より


宮崎が89年3月のコミックマーケット35に「E・T・C大腕」というサークル名で自作漫画本『マンモスコング・月光仮面』を販売。知人には「6册売れた」と話していたという。

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