■ビデオリストの一部


所有リスト

押収された5763本のビデオのタイトルは公表されていないので、全てを書き出すのは残念ながら不可能であるが。


都市のフォークロアの会編「幼女連続殺人事件を読む:全資料 宮崎勤はどう語られたか?」(1989/JICC出版局)より


週刊読売89年8月27日号から転載されたリスト。

132本のタイトルが書かれているが、警察が押収を否定した「ギニーピッグ2・血肉の華」が入っている。これは盛んに報道されたため、編者の思い込みで後から付け足されたと思われる。

「プチトマト」はいわゆるロリータ物ビデオであろうが「ギニーピッグ」同様、アニメ/特撮のリストに唐突に入っているのが少々不自然であり、これも後から付け足された可能性がある。




●ニュース映像のビデオタイトル



上は週刊文春89年8月31日号より(写真は産経新聞社提供)。下はニュース映像(放送局不明)。

ガンスモーク(TV西部劇)
帰ってきたウルトラマン(特撮)
ドラグナー(アニメ)
セーラー服反逆同盟(
TVドラマ)
(光戦隊?)マスクマン(特撮)
新エースをねらえ(アニメ)
黄金バット(特撮/アニメ)
ヤマトよ永遠に(アニメ映画)
怪獣スーパー
TV(特撮)
レインボーマン(特撮)
女王陛下の007(スパイ映画)
ハイスクール奇面組(アニメ)
ETV8「大伴…」(教養番組)
ピンクレディのすべて(アイドル)
仮面ライダー(特撮)
スペクトルマン(特撮)
透明剣士(特撮時代劇)
燃えろアタック(
TVドラマ)
いきなりフライデー…(バラエティー?)
仮面ライダー(特撮)
ウルトラセブン(特撮)
キン肉マン(アニメ)
クリーミィマミ(アニメ)
光る眼(
SF映画)
スーパーロボットレッドバロン(特撮)
刑事物語4.くろしおの詩(邦画)
宇宙家族ロビンソン(特撮)
キカイダー01(特撮)
J9(シリーズ?)(アニメ)
ストップひばりくん(アニメ)
惑星ロボ ダンガード
A(アニメ)
おしゃべりハウス(不明)
新メイプルタウン…(アニメ)
おもいっきり探偵団覇悪怒組?(特撮)
おかしなおかしな自転車競争(自動車競走の誤り?)
禁じられた…(不明)
謎の円盤
UFO(特撮)
あまえない…スペシャル(不明)
帰ってきたウルトラマン(特撮)
レインボーマン(特撮)
グレートマジンガー(アニメ)
ウルトラセブン(特撮)
アメリカン
TUBE(不明)
SFXの怪獣
燃えろタ…(不明)
うる星やつら(アニメ)
六神合体ゴッドマーズ(アニメ)
科学戦隊ダイナマン(特撮)
魔法の妖精ペルシャ(アニメ)
スパイダーマン(特撮)
ロボット8ちゃん(特撮)
私は人間…(不明)
伝説巨神イデオン(アニメ)
キューティーハニー(アニメ)
北斗の拳2(アニメ)
少女コマンドーいづみ(
TVドラマ)
風雲児…(不明)
人造人間キカイダー(特撮)


上から順に、判読できるタイトルを書き出してみた。一本のテープに複数の作品が入っている。また、一見白地に見えるテープのケースにも、ボールペンで細かくタイトルが書かれている。

「女王陛下の007」と「ハイスクール奇面組」が同じテープに入っている分類能力の欠如ぶりは、当時から頭の悪さを指摘する声があった。

ラベル中に
NHKのお固い教養番組「ETV8」があり、意外な感を受けるが、かすかに「大伴…」と読めるので、教育テレビ87年11月放送の「少年誌ブームを作った男・大伴昌司」の録画に間違いないだろう。

資料によっては〈5763本のビデオは全て録画済み〉という記述もあるが、ビニールパッケージされたままの未使用テープも大量に積まれているので、これは事実ではないと思われる。
他、文芸春秋89年10月号の記事から、上のリストと重複しないもの。

11PMUFO特集
おかしなふたり
アンドロメロス
美しきチャレンジャー
市民大学講座 フランス革命二百年
マッハ
GOGOGO



●レンタルしたビデオ


――裸の幼女が水辺でたわむれる「ベビードール」、路上に置かれた段ボールに内臓が入っている、などの場面のあるホラー映画「悪魔の女医さん」、幼女アニメ「麗夢」、成人向け「ジーナ・セクシーライブ」、「
CMギャル・カタログ」、ロリータ物「マリアン」――宮崎が見たビデオのごく一部である。――

朝日新聞89年8月14日より


日刊スポーツ89年8月14日

宮崎が会員になっていたレンタルビデオ店の貸し出し記録から記事にしたもの。このときの報道はプライバシーもへったくれも無かったのだ。入会時の免許証コピーまで、スミ塗り無しで掲載されている。

幼女アニメ「麗夢」とは
OVA「ドリームハンター麗夢」のことだろう。「惨夢、甦る死神博士」「首なし武者伝説」がある。他社の記事では、この他に「スーパーギャルズ」「スケバン刑事・風間三姉妹の逆襲」「TVアニメグラフィティ」「後藤久美子」「セックスウォーズ」等のタイトルがある。

小笠原和彦氏は著書で、毎日新聞のレシート報道に疑惑を呈し「六千本近いビデオに何が映っているか見当もつかない時点で、記者がレンタルビデオ店をしらみつぶしにあたるなど考えられない」と書いているが、その考えられないことがこうして記事になっているのだが。



●月刊アニメージュ1989年8月号

宮崎の部屋の一隅、電灯の真下辺りに、月刊アニメージュ1989年8月号が置かれている。

(朝日新聞社)


                    アサヒグラフ89年8月25日号より             (C)徳間書店
          

ビデオテープで半分ほど隠れているが、表紙は宮崎駿監督作品「魔女の宅急便」。他の雑誌は乱雑に散らかっているのに、これだけが表紙の面を立てて置かれている。お気に入りの表紙だったのだろう。
アニメ監督の富野喜幸氏は「彼(宮崎勤)の部屋には〈宮崎駿さんの風の谷のナウシカ〉等と、宮崎アニメだけが〈さん〉付けでラベルにタイトルが書かれていた」と発言している(週刊プレイボーイ95年9月12日号より)

大塚英志氏も同じことを書いている。大塚氏は一審で特別弁護人となっており、一応信用性はある。

宮崎は宮崎アニメの(ややこしいね)ファンだったようだが、筆者が調べた限りでは、そのように書かれたビデオのラベルを確認することはできなかった。ラベルの話が事実かどうかは、ちょっと現時点では不明である。


宮崎は「魔女の宅急便」公開の日を楽しみにしていたのだろうか。だが宮崎の逮捕は89年7月23日(以来、宮崎は死ぬまで一歩もシャバを出歩いていない)。「魔女の宅急便」公開は、逮捕から一週間後の7月29日からであった。




●マンガのタイトル

オマケ?として、部屋に積まれたマンガのタイトルもこの機会に書き出しておこう(上から、判読できた物のみ)。



アサヒグラフ89年8月25日号より

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おいら女蛮
わたるがぴゅん!
赤い迷路
ヒップホップ応援団
とんとん飛丸
六三四の剣
(その他の棚で判読できた物)

漂流教室
バイオレンスジャック
ニャロメのおもしろコンピュータ探険
コロポックルの枕
一休さん
おらぁグズラだど
キューティーハニー
サハラ 女外人部隊
のらガキ
サンダーマスク
仮面ライダー
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スパイダーマン
レインボーマン
ゲゲゲの鬼太郎
ウルトラマン大事典
新・ボディガード牙/カラテ地獄変
マンガ少年
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怪奇大全科
世界の怪獣大百科

少年キング
少年マガジン
少年サンデー
(昭和40年代のもの)



●ポスター

これもオマケ。入り口側の壁に貼られた「ラ・セーヌの星」と「宇宙戦艦ヤマト」のポスター。


アサヒグラフ89年8月25日号より




●「社会から閉じる」

宮崎は拘置所の独房でも、裁判資料やマンガ本を身の回りに積み重ねていたという。

自室の大量のビデオやマンガ本は、無造作に平積みされたものが多い。あんな保管の仕方ではテープはたるみ、マンガはインクが裏に抜けてしまうのだが…個々の作品への愛着は特になかったのかもしれない。


「とにかく周りを一杯かこみたい。周りを一杯にして、それとおしゃべりする。ビデオと話をする」

「宮崎勤精神鑑定書別冊・中安信夫鑑定人の意見」 (2001/星和書店)より


「余白をなくすと、より社会から隔離できる。(中略)余白をなくすと、自分を社会に知られない状態にできる。それだけ隙間が埋まると思って、ぎゅうぎゅうに詰め込んだ」

吉岡 忍著「M/世界の、憂鬱な先端」 (2001/文藝春秋)より

ビデオテープは「社会を遮断する」ための、特殊なレンガブロックであった。蚕が繭を作るように、録画済みのテープをひたすら積み重ねることで、必死に防護壁を作っていたのだ。子供のおまじないのようだが、彼にとっては真剣だったのだろう。



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