なぜ濡れ方に違いが?

●豪雨の中で埋めた?

自供でも判決文でも、農道に穴を掘って死体を埋めたのは、脅迫状を届けた帰りの午後9時頃とされている。入間基地の気象記録が裏付けている通り、その時刻は豪雨の時間帯だ。

農道は他の地面より若干窪んでいる。豪雨の中で穴を掘れば、農道に溜まった雨水も容赦なく流れ込むだろう。どの程度かは推測できぬが、死体を横たえる時点で、穴の底には少なからぬ泥水が溜まったはずである。


亀井トム著『狭山事件 続・無罪の新事実』より

だが検視時の善枝さんの写真を見ると(さすがにアップの写真を掲載するのははばかられるのでご勘弁を)、うつぶせに埋められていたのに、制服のブラウスは白いままであり、目隠しのタオルにも白地の部分が残っている(顔面の下にはビニール片が敷かれていたそうだが、そんなもので泥水の付着は防げまい)。

●大野証言の不思議

また、奇妙なのは、死体発見現場の実況検分をした大野警部補の証言だ。


弁護人:特に濡れておったという部分はあるんですか、濡れ方の多いところと、少ないところはあったんじゃないでしょうか。

大野:着衣でですか、荒縄は特に濡れておったという記憶はあるんですがね、着衣については、まあ乾いたところはないですね。

(二審44回公判調書)「狭山事件を検証する」狭山事件 死体発見現場 より


衣類の濡れ方については、多分に大野氏の主観なので、その言葉だけで実際の濡れ具合は判断できない。だが「荒縄は特に濡れておった」に引っかかってしまう。

自供の犯行態様では、衣類と荒縄で、濡れ方に差ができようはずがない。なぜ大野氏はわざわざ、濡れ方に違いがあるようなことを言ったのか。

ブラウスやタオルが泥で汚れていなかった点だけでも、判決文の「9時頃(豪雨の中で)埋めた」は虚構と分かる。死体は雨がやんだ後、雨に濡れなかった場所から運ばれて埋められた可能性が非常に高い。

もっとも、推測を書くのはなるべく控えたいので、そういう状態であった、とまでにとどめておきたい。




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